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第五一号『(A)Dヨネ子のイチゴ★一会映像日記』
投稿日時: 2014-06-18 12:04:28

『ペンではなく、カメラなんです、私たち』

ニュース番組の制作に携わってまもなく2年。
『念願の機会』がついに私にやってきた!

「デリケートなトピックだから、慎重にね…」

編集長(番組の一番偉い人)から
2、3の注意事項の念押しと共に託された企画特集案。
初めて企画特集を自分で担当することになったのだ。(パチパチ!)

これを読んでいる方は「卵活」という言葉をご存知だろうか。
このあまり聞き慣れない言葉が、
初めて私が担当することになった企画のテーマだ。

「卵活」とは将来の不妊リスクに備えて、
若いうちに元気な卵子を冷凍保存しておくこと。

現在、日本では出産の高齢化に伴い、
夫婦やカップルの6、7組に1組が不妊に悩んでいるという。
その不妊の原因の多くは「卵子の老化」にあるとされる。
「卵活」で冷凍保存された卵子は理論上、半永久的に保つことができる。
そのため、すぐには出産を望んでいないが、
将来の不妊リスクを懸念する未婚女性たちから注目を集めているのだ。

こういった女性に関わるデリケートな分野の企画は、
通常、女性のディレクターが担当することが多い。
しかし、現在番組に女性のディレクターがたまたまいない状態だったので、
ADの私に白羽の矢が立ったのだ

もちろん「お目付役」として先輩ディレクターも付けられるが、
基本的には私が一人で取材に行き、原稿を書き、編集をする。
失敗しても誰のせいにもできない。
これまではADとして後ろから盗み見してきたディレクターの作業を
全て自分の責任でやらないといけないというのは、やはりプレッシャーだ

そして、不安を抱えたまま迎えたロケ当日。
今回のロケには番組の女性キャスターも同行することとなった。
緊張もしたが、それよりも2人の女性の目線で取材を行う心強さがあった。
実際、カメラが回っていないときにも
あらゆる興味や疑問を取材対象者にぶつけることができて、
手ごたえすら感じていた。

しかし、実はこのロケが「甘っちょろいもの」であったことを
この後に私は思い知ることになる…。

「画がない」「画がともなっていない」

テレビ番組制作の世界ではこういう言葉がよく使われる。
ナレーションに合う画、つまり映像がない場合や撮影できていないことだ。

今回は「『卵活』が増えている」というニュースなので、
実際に「卵活」をした患者、
もしくはこれからしようと考えている人を取材しなくてはならない。

しかし、なかなか撮影可能な取材対象者は見つからず、
今回は卵子バンクの作業風景と医師へのインタビューの撮影のみで
VTRを構成しなければならなくなった。
しかし、原稿を書き上げて先輩ディレクターに見せたところ、
指摘されたのは私が全く気付いていなかった点だった。

先輩D「このナレーションって必要ないんじゃない?」
ヨネ子「でも、不妊治療の現状や卵子を凍結する未婚女性たちの動機は
         『卵活』の背景として、外せないと思うんですけど…」
先輩D「そうだね。でも、画はどうするの?
ヨネ子「・・・」

「卵活」をする未婚女性の動機の部分の映像に、
医師のインタビューや作業風景では「合わない」というのだ。
通常ならば、こういった場合は患者の映像を入れる。
しかし、そうした映像がないにも関わらず、
私は文章上でのみ原稿を考えていたのだ

こんな情けないやりとりも起こり、
自分の子供のように大切に書き上げた原稿の
穴あき加減にやっと気づかされた。
取材前からある程度、不妊治療や卵活そのものの背景の説明が
必要だとわかっていながら映像としてどうするのかを考えていなかったわけだ。

もう一は取材のポイントが画に反映されていないということ。
取材中に感じた面白さや驚きが、カメラマンへの指示不足で、
いざ取材テープを見てみると、取材状況を押さえただけで、
「なんとなく」撮っているような映像でしかなかった。

「うわ、すごい!」と思ったら、単純に物に素早く寄ってみたり、
作業する人の真剣な表情を生かしながら撮ったり、色んなことができたのに…。
私が何も指示をしなかったばかりに
映像からは、「感情」が全く見えてこなかった。

現場で感じたことを大切にしているという先輩ディレクターが言っていた言葉がある。

“取材は生きもの”

その場で感じたことや発見したことを指示して、
映像に反映させなければ、私のいる意味がない。
私はまだまだ「ディレクター(=指示する人)」ではなかった…。

後日、取材先への迷惑に申し訳なさと恥しさを感じながらも、
再度取材に入らせてもらった。
本来私自身が行くべき取材だったが、
迫る放送日を前に時間の折り合いがつかず、
先輩ディレクターにお願いせざるを得なかった。
それでも、初めての驚きや感動はもはや映像に収めることはもうできない。
撮り逃した作業の部分などの映像を少し補うことしか、
あとからどうこうしようと思ってもできなかったのだ。

プロデューサーや先輩ディレクターのアドバイスやサポートをもらいながら、
「自分で取材をして、自分で原稿を書く」。
その作業を通して改めて気づかされたのは、
私たちは映像で勝負をしているという、本来は至極当然のことだ

取材が第一、現場が第一。
そのために、ありとあらゆることを精いっぱい想像して初めて、
「臨機応変」に生きものを見つめて受け止められるのだと思い知った。

悔しさ、情けなさを噛みしめながらも、漕ぎつけた放送。
映像を扱うことの難しさを思い知った。

一方で、
映像だからこそ、難しい内容も少し易しく受け止められる。
映像だからこそ、普段見られないものを見ることができる。
映像だからこそ、心に刺さる。


ペンではなく、カメラを選んだ私にできることを
のたうち回りながらでも考えていきたい。



追記です。

この文章は昨年度のADのときに書いた物ですが、
4月から晴れてディレクターに昇格しました
これからも一歩一歩、精進していきます。

文責:制作部 米森美耶子

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